私から好きになったから、私から違ったって言う

おこがましいようだけど、私はXが恋に落ちた瞬間を知っている。いつでも私がイニシアティブをとってきた。だから先手必勝というわけではないけど、これにも少し似た雰囲気を感じる。先に決断する者はリスクを負う代わりに、自分の意思で道を切り拓けるのだ。

 

要はXが所詮何も考えていなかったってこと。相手のレベルを見誤ったまま付き合い続けるのは、よくある消耗パターンだ。どうして見た目は簡単に中身を教えてくれないんだろう。(大島弓子のある漫画はそれを描いていた。)

Xは私の提示した気分の中でしか私に会いに来れない。Xの中身は大人どころか半分が人間で半分動物だ。彼の中には他人が理性で推し量ることのできない思考ではない思考が渦巻いている。私にはその泥のような混沌が見えるような気がする。

私達が楽しい時言葉は必要ないけど、そうではない時には人間の言葉が必要だ。でもXはいつまで経っても私の出方を探るクリティカーだ。嫌いになれる瞬間を探しているの?まるで人に馴れていない動物が、差し出された食べ物の匂いを嗅ぐようないやらしさで私を吟味する。(…気が変わったので、ここから先はフリーライティングでいきます。)

…底のない鼠色の実を奥まで喰い裂き、血の滴る歯からこぼれる光、そうだあれは何か良い物のように思えた。君は覚えているかい?光の中で窒息しそうに幸せだったあの夏の日のことを?君は忘れてしまったかい?それとも最初から知らなかっただけ。黄色の日々は細いドロドロの小川となって左方向に流れていく。猫はその川を忍び足で渡るだろう。その足には黄色い蜂蜜が少しだけ付く。でも向こう岸の草むらで拭えばいいだけのこと。私は悲しくなって駆け足でその場を立ち去る。もう君には会えない。もはや会う必要などない。河原に積み上げた石も今は誰かに崩されてしまっただろう。それが何を意味するのか、君は知る由もなく、いよいよとうとうと黄色の日々は流れゆく。