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「公開討論」

A:さて、いつまでこうしていても埒が明かないから、そろそろ私達の見解のすり合わせを始めませんか?

B:いいよ。ボクだってこんな状態はいやさ。ただ色々わからないことがあっただけで。

A:そう、よかった。で分からないことって何?

B:君が何でそういうことをしたいのかなって。

A:これは私の生来の衝動なんだ。なぜなのか自分でもわからない。でもこれをしなければって思うんだ。本能的に、感覚的にこれがすばらしいことだって「分かっている」。だからするんだ。

B:そんなこと言われても僕にはわからない。悪いけど僕は理由のわからないことに対して動けないんだ。君がそれをする理由を僕にも分かるように教えてよ。

A:・・・人の孤独にアクセスしたい。想いや時間を皆と分かち合いたい。孤独な私達が一瞬でも孤独じゃなくなる瞬間を作りたい。それでこういうことをやってる。私が今まで出会ったそういう瞬間があるから、それをやる意味はあるって確信している。私はそれを人生で何よりも価値あるものだと思ってる。その価値のために生きる。それは十分、人生を捧げる価値のあることだと私は思う。

B:それは君じゃなきゃいけないの?

A:そんなことない。でも周りにあまりいないし、わざわざそういう人を探して追っかけるより私自身が自分でやろうと思って。それができる位置に付けたんだから。だからお願い、私に協力して。私と一緒に来て。

B:・・・君が何か今までと全然ちがう新しい事を始めようとしているのが、僕には不安を通り越して恐怖なんだ。僕が、というより僕達が違うものになって、僕達が消えてしまうんじゃないかって。

A:変わってく私達自身が私達だよ。変わっても私達は私達でなくなったりしない。大丈夫だから。どっちみち、どこにも決まった「私達」なんていない。私達は私達自身の中じゃなくて、私達を知る人たちの中にいるんじゃない?どちらかというと。皆が私達を知っててくれれば良しってことにしない?私達の思考の形跡はこんな感じで残せるから、何かあったら戻ってくることもできる。

B:逐一、進行過程を僕にも見せておくれよ。僕はゆっくりしか進めないんだ。

A:わかってる。ふたりで相談しながら進んでいく。これからもずっと一緒だ